【書評】君の膵臓をたべたい

『君の膵臓をたべたい』とは?

『君の膵臓をたべたい』を映画で見たっていう人は多いんじゃないでしょうか?

映画版と小説版では実は若干ストーリーが異なります。今回は小説版についての紹介です。

この小説の作者は住野よる、という方です。『君の膵臓をたべたい』はデビュー作みたいですね。

最後の方まで主人公の名前が出てこない、という独特な構成をしています。

あらすじ

主人公はあまり社交的な人間ではない。

しかしクラスメートの死が近づいていることを偶然知ってしまう。しかもそのクラスメートは、主人公とは真逆のタイプの学校で人気の女子だった。

秘密を共有してしまった主人公とその女子、桜良は互いに惹かれあいながらも、独特の関係を築いていく。

そんな中、桜良は長期の入院を迫られる。余命はまだ十分残っていたので無事退院できたのだが、その後当然、主人公へのメールの返信が途絶えたのだった...。

感想

冒頭でも述べましたが、この作品を映画で見た、という方は多いと思います。僕も映画でも見ました。

でも正直小説を読んだ後だったので、物足りない感はありました。

確かに映画は素晴らしい出来です。小説と違った良さがありました。

でもこの小説の一つのポイントとなる独特な表現が映画だと表現しきれないんですよね。

文章のレトリックもそうだし、あとは主人公の感情とか。

感情って小説だと文章として表せるんですけど、映像だとなかなか難しいですよね。

『カイジ』なんかは藤原竜也さんの演技力と映画の雰囲気があるから、はっきり音声化できますけど、シュールなシーンではなかなかそれはできません。

だって告白のシーンとかで「心音が相手にも聞こえていないか心配になる」とか音声で流れたら雰囲気台無しになっちゃいますしね。(笑)

まぁ『君の膵臓をたべたい』には告白のシーンなんかは出てこないんですが、音声化しずらい主人公の心情が物語の面白みを増してるのは間違いないです。

あとこの小説の表現力が素晴らしいのは、シーンが本当に思い浮かぶところもあれば、うまく隠して読者に想像させるところなんですよね。

これって続きが気になる小説の特徴だと思うんですよ。

はっきり表現されているから、具体的に想像できる。でも少し含みがあるから、そこに読者の考える余地が残されている。

読者は自分の考えが正しいか、早く続きを読んで確かめたくなっちゃうんですよね。

たとえば最後の方の主人公のメールへの返信が途絶えたシーン。まさかここで桜良のスマホが壊れたから、なんて考えた人はいないと思います。

そこで私たち読者は考えさせられるわけですね。桜良の体調が急に悪化したんじゃないのか、とか、桜良が退院できるっていうのは嘘で本当は無理してダメだったんじゃないか、とか。

でも実際は通り魔に襲われたっていう切ない終わりだったんですね。

僕はこの終わりも上手いと思っていて、それはどうやって物語を終わらせるんだろうってずっと考えていたから。

定番は桜良の容体が急変し急死、ですがそれじゃあ普通すぎだろと思ってたんです。まさかこんなあっけない終わり方をすると思っていなかったので、いい意味で期待を裏切られました。

長くなってしまったんですが、この種の小説の中だったらかなり上位に入るお面白さだと思います。

まとめ

いかがでしょうか。

映画は見たけど小説はまだ、って人はぜひ読んでみてください。

その逆の人も、ぜひ映画も見てください。役者さんの動きを見ながら、この時こういう心情が書いてあったなぁって考えると結構おもしろいですよ。